サエズリ図書館のワルツさん 2/紅玉いづき,sime

世界の終わり、が一度起こった世界の、その後の人たちの滅びかけている本を巡る物語、2巻。

今回、物語の中心となるのは『サエズリ図書館のチドリさん』という章タイトルが示すように、千鳥さん。
大学4年生の千鳥さんは就活中なのだけど、自他共に認める真面目な人間ながら、しかし真面目な人間故に、なかなか決まらない。そんな中で出会った“図書修復家”……行き着いたのはサエズリ図書館。
本当に今回の主人公は千鳥さんな2巻でしたが、読んだ時の印象はいい意味で1巻と変わりません。本への真摯な愛情が溢れ、優しく解きほぐされるようなお話と文章には心打たれるし、時に激しく揺さぶる感情的なシーン、具体的には千鳥さんと降旗先生のそれ、には、もう、心を撃たれる思い。
まぁ2人だけでなく、それ以外のキャラの関係もみんなたまらないのですけども。それこそ降旗先生とワルツさん父であったり、ワルツさんとタンゴくん、ワルツさんとサトミさん。
あ、今回は最後の最後に『サエズリ図書館のサトミさん』という短編が1つ収録されていて、本当に十数ページの短い短編なのですけど、これがもうたまらない出来で。たった十数ページなんだけど、登場人物の人生の記録を何百ページも読んだかのように感じる程に濃縮されていて、読み終わった後に、感服の溜息が漏れ、鮮烈で痺れる。
また、それぞれにうっすらと流れるのは仕事……働く……生きる、ということ。仕事をすること、働くということ、生きることとどう向き合うか。チドリさんのお話があっての、サトミさんのお話。どちらも働くことについて少しずつ触れているのだけど、全く違う表情を見せてくれる。

それにしても、紅玉いづきさんの書く文章好きだわ。言葉選びだったり、句読点の打ち方だったり、リズム感が心地いい。読んでいて、スルスルと頭に流れ込んでくる感じ。
simeさんのイラストもまた素晴らしい。表紙から扉絵から、物語の空気感をそのままパッケージングしていて、キャラの息遣い……本のインクの匂いまで伝わってきそう。光の具合がたまらない。

というわけで、大満足の2巻でした。
電書がどれだけ便利になっても、紙の本から離れられそうにない人、必読です!

スーサイドクラッチ 魔術師スカンクシリーズ 3/江波光則,中央東口

「The Kids Aren't Alright」
魔術士スカンクシリーズ3巻。やはり、江波さんの青春の物語の切れ味は半端ない。

今回の主人公は『ストーンコールド』や『スピットファイア』でも出てきた逃がし屋のろくでもないジャンキー息子・秋斗。
薬とは手を切った秋斗だったが、知り合ったゴスロリメンヘラ女の美尋と2人でなんとなくダラダラと過ごすうちに、ひょんなことから行方不明になっている沙都を探すことになり、かつての薬の供給源である「魔術師」スカンク・バッツと連絡を取り……という感じの幕開け。

今回の章タイトルの元ネタになったのはThe Offspring。言わずとしれたアメリカのメロコアバンド。もし、彼らを直接は知らずとも、「ヤーヤーヤーヤーヤー」の掛け声で始まる疾走感のある『All I Want』や「アハーアハー」という特長的な合いの手が入る『Pretty Fly(For A White Guy)』は、テレビの番組などでも使用されることもあり、聞いたことがある人もいるのではないだろうか。
速い曲が魅力かと思えば、ずっしりと重さのある曲も得意で、その上で時におどけるようなアレンジもしたりする懐の深さも見せる。その全てを支える焦燥感すら感じる歌のメロディ、それを歌い上げる高さとエモさを併せ持つデクスターのボーカルが何よりも魅力的なパンクバンド。疾走する演奏を彩るヌードルズのギターも、歌とギターをしっかり支えるリズム隊もとんでもなくかっこいい。実力派などと言うのがおこがましいほどの、各国でヒットを飛ばす世界的なバンド。

1章『The Kids Aren't Alright』
1998年に発表された5thアルバム『Americana』に収録されている楽曲。ミュートを混ぜながら不安を感じさせるようなエモいギターのリフから始まる、ハードながら聴かせる力のあるオフスプリングの持ち味の1つとも言える魅力を存分に出した曲。

2章『Dammit, I Changed Again』
2000年に発表された6thアルバム『CONSPIRACY OF ONE』に収録。鋭角に尖った攻撃的なメロディの歌とギターが、焦燥感すら感じる疾走するスピード感が、これぞオフスプリングという曲。

3章『Killboy Powerhead』
1994年に発表された3rdアルバム『SMASH』収録曲。タイトルの言葉が連呼されるサビと、繰り返される印象的なギターのリフが癖になる1曲。

4章『Staring At The Sun』
1章と同じく『Americana』に収録された楽曲。ギターとボーカルだけのパートからスタートしそれなりの盛り上がりを見せたと思ったら、突然疾走するオフスプリングらしいスピード感が気持ちいい曲。

読んだ後に元ネタになった楽曲の入ったアルバムを久しぶりに聴いたけど、なるほど、と思わさせられた。少しビックリするほど、とんでもなくこの作品にマッチングしている(特に『Americana』)。
この作品がとても好みで、しかしオフスプリングを聴いたことがないという人がいるなら……パンク(特にメロコアというジャンル)が嫌いでなければ……聴いてみることを是非オススメしたい。この作品のことを考えながら聴くと、この作品を更に愉しむことができるのではないかと思います。
前2作もそんな感じなのだろうか。クイーンもダフトパンクも、アルバムを1,2枚聴いたことがあるくらいなので参考程度にしかしてなかったけど、この作品がこの感じだと、あっちもそんな感じなのかなと思える。

と、オフスプリングの楽曲を元ネタに飾られた章タイトルの本作ですが、その元ネタのオフスプリングの楽曲に負けない迫力とクオリティで、どうしようもないクソッタレな青春の日々が見事に表現されています。
考えすぎて動けなくなる、そして動けずにいる間に追い詰められる感覚、ジタバタと藻掻く日々、その停滞が、その焦燥感が、疾走するクライマックスをぐんぐんと後押しする。
この物語に出逢えて本当によかったと、そう思える作品でした。
こんなこと言っても仕方ないけど、もっと若い頃に読めたらもっとよかっただろうなぁと思う。そういう意味では、今の十代・二十代前半の人たちに読んでほしい……のかもしれない。

シリーズとしてはここでひとまず終了、なんですかね。
まだまだ読みたい部分のあるシリーズだけども、冷静に眺めると、これくらいがちょうどいいのかな、とも思えなくもない。つまり、本当はもっと読みたい。
ともあれ、本当に面白いシリーズでした。

スピットファイア 魔術士スカンクシリーズ 2/江波光則,中央東口

魔術士スカンクシリーズ2巻。
2巻というだけあって、世界観が同じであったり、登場人物が重なったりということはあるが、1巻の『ストーンコールド』の続き、ということではない。雪路の話も近くにある世界ではあるが、主人公は全く別の人物。今回は弦という20歳の高校生。正真正銘のサイコ野郎である。
20歳で高校生やってるのはあるキッカケからであるが、そのキッカケは読んで頂くとして、この物語はそんなサイコ野郎・弦とキチガイアニオタ春鷹のちょっとアレな日々を綴った……青春小説。うん、たぶん、青春小説。

さて、そんな青春小説だが、車に乗っているシーンから幕を開ける。それは、その車で大型のレンタルショップに春鷹がアニメを借りに行くシーンなのだが……本来であればこの後、その店に場面は移り、DVDをあれこれ見ながら、アニメ談義を交えて読者をニヤつかせるところであろうが、そうはならない。春鷹が店に行った後、場面は車のままである。
何故か。車には道中で拉致った同級生がいるからだ。この作品がどういった方向性のモノか、お察し頂けただろうか。
勘違いして欲しくないのは、2人は虐めなどをするタイプの人間ではない。実際、彼らが拉致った同級生というのは、かつてクラスで虐めを行なっていた人間なのだ。
しかし、虐めを止めていたわけでもない。更に言えば、虐められていた人間の友人だったり、虐められていた人間に同情したわけでもない。眉を潜めるくらいはしたようだが。では、何故2人が虐めていた人間を拉致ったか。それは、彼らが虐めをしていた人間を「殺してもいい」と判断したからで、たまたまそういうタイミングであった、というだけなのだろう。
そういう意味では、この作品は、2人がやりたいことをやりたいようにやりまくる小説であると言える。勿論、ただ捕まったり殺されたりするのもイヤみたいなので、2人には2人なりの色々な制約はあるが、それ自体はやりたい放題が故にの話なので、結果的にやりたい放題してるとしか言えないw
結果的に、2人は虐めに対してのカウンターを放つ形にはなっているが、虐めそのものに対してムカついているのではない。見るに堪えない過酷な虐めをするような人間を「殺してもいい」と判断し、その人間を殺したいと思っているだけなのだ。ホントにクソッタレといえばクソッタレな2人である。しかし、そんなアレな2人にどんどん惹き込まれていくから不思議だとしか言いようがない。

今回の『スピットファイア』の章タイトルは「Rollin' & Scratchin'」「Something About Us」「Harder, Better, faster, Stronger」「Human After All」と、Daft Punkの楽曲名が使用されている。『ストーンコールド』は「Bohemian Rhapsody」「Crazy Litlle Things Called Love」「Too Much Love Will Kill You」「Keep Yourself Alive」と、QUEENの楽曲名で統一されていて、なんとなく妙に作品にマッチしている気がしたので、今月発売される『スーサイドクラッチ』では、どのミュージシャンの楽曲が使用されるかも楽しみ。
そんな魔術士スカンクシリーズ3巻『スーサイドクラッチ』は7/17発売! もうすぐなので表紙が見れたし、あらすじも読めたけど「いい意味で悪い予感しかしない」という、わけのわからない期待を抱いている。

ストーンコールド 魔術士スカンクシリーズ 1/江波光則,中央東口

資産家の息子として育ち、そのスペックと金でスクールカーストの頂点に立つものの、父親の転落と共にカーストの底辺へと落ちた雪路。底辺へと落ちたことにより、虐めを受けることになった雪路はある日ガスガンによって左目を失う。資産家として名を馳せた父親譲りの逞しい哲学を持った雪路は、自身への虐め……左目を奪った人間に“対価”を支払わせることを決意するところからこの物語は始まる。

お話としては、スクールカーストを絡めてあるし、思春期で恋やら何やらもあるしで、青春のお話ということになるか。まぁ主人公の年代も年代ですし。しかし、それを彩るのは金・暴力・セックスである。主人公の冷めた考え方がその色を促進する。これだけ聞くと、どこのハードボイルド小説だと思うかもしれないがw、しかし(それともだからこそなのか)、ラストシーンを見る限り、とことん、骨の髄まで、青春小説なのではないか、と、そう思う。
しかし、そこはそれ。本の裏表紙には内容の引用でもある「この学校をコロンバイン高校にしてやろう。そう、決めていた」などという物騒な言葉が並び、帯の「虚淵玄・熱賛!」が、またそれを煽る。血と硝煙が煙る青春であることは必至である。

さて、主人公の雪路は先程も書いたように、父親譲りのちょっと特殊な哲学を持つ。それとも、一流の“商人”というモノはこういうモノなのだろうか。自分にはその哲学自体はちょっとわからないけれども、あまりわからないからこそ、読んでいてとても面白かった部分もあるかもしれない。
また、虐めへの復讐劇というと、主人公が虐めた者への何らかの仕返しなり、何らかの解決なりを果たした時に、快感や気持ちよさを感じる部分があるかもしれないが、このお話はそういう部分は、正直あまりない。いや、なくもないのだが、主人公の圧倒的な冷徹さと暴力の前に、読んでいてそんなものを感じる余裕がないのではないだろうか。
そして、そんな雪路に、わけわからん、頭おかしい、そう思いながらも、どんどん惹き込まれる。
そんな風にしながら、短い期間にいろんなモノを紆余曲折して、物語が辿り着いたクライマックスは、壮絶、という言葉に相応しい。その幕の引き方も含め、ラストシーンは壮絶ながらも美しさすら感じる。これ以外にはないなぁとすら思う。
そういう意味では、元々のデビュー元のガガガ文庫でレーベルメイトである、渡航さんの『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』に似た魅力があるのかもしれない。俺ガイルはあくまで学園ラブコメであり、キャラとしても八幡と雪路は全く似てはいないのだけども、2人を端から見ていてダークヒーロー的な部分があるという点は共通している気もする。その輝き方は全く違うし、彼らはおかしいと思うのだけど、何故か好きになってしまうというか。つまり、これは『やはり太田の青春ラブコメは悪がっている。』なのだと言ってもいいかもしれない。略して、太田が悪い……これは略称論争が起こりそうにないごめんなさい太田が悪いって書きたいだけでした。

中央東口さんのイラストも凄いですな。イラストにモザイク処理をかけた表紙もインパクトあるし、クライマックスでぶち込まれるぶち抜き挿絵はこのサイズでフルカラーであることが、十二分に活かされたイラストだったと思います。開いた時は息が止まる思いだった。

と、大変満足な1冊でした。
タイトルからもわかる通り、この作品は『魔術士スカンクシリーズ』というシリーズモノ。2巻はもう出ており、『スピットファイア』を読むのが今から楽しみです。
帯を見る限り、この『ストーンコールド』発売時は2巻は『スーサイドクラッチ』だったようですが、『スーサイドクラッチ』は3巻、7/17発売の模様。つまり、3巻もすぐ読める。やったー!!!

果てなき天のファタルシス/十文字青,ネコメガネ

ジャンルとしては戦争モノ、になるか。ファタルという謎の生命体に攻撃されている人類、という状況。かなり情勢は厳しく、正直、もう滅びゆく世界、というような状況の中での、1人の少年兵の物語。
面白かったのは地の文。主人公の1人称によるモノで別に特段珍しいということはないのだけど、とても落ち着いている感じで、その雰囲気がかえって感情的に響くというか。巧い言い方が思い浮かばないけれども、たとえば音楽に喩えると、とてもエモい。特に終盤、クライマックスの少し前くらいにはやはり色々なことが起こったり、わかったりするのだけど、それに対する主人公の感情が、とてもこっちに訴えかけてくるというか。
元々はBLACKPASTというラノベ系の同人雑誌の2号に執筆されたもので、ちょうど自分も文学フリマで買っていたんだけども……まぁ、積んでました……。本来は、原稿用紙250枚ぐらいで『ぷりるん』を更にヤバくしたラブコメ的な作品をお願いしたみたいだけど、紆余曲折の末、原稿用紙450枚の戦争モノになったご様子。書籍化されてよかったです。レーベルが星海社FICTIONSというのもよかった。大判イラストフルカラーで、表紙デザインもかっこいい。逆に、普通の文庫本だったらBLACKPAST持ってるし、よっぽど好きなイラストレーター、とかじゃなかったら買わなかったかも。別に文庫本を腐すわけではないけども、本の装丁、を楽しむには文庫本はやっぱりちょっと物足りない。ともかく、書籍化にはいい巡り合わせだったのではないでしょうか。
内容的には戦争のお話だし、あまりトーンの明るいお話ではない。描かれる少年少女の青春もスカッとするような楽しさとかとは無縁だ。結末も、何かを得たラストシーンだとは思うけれど、ハッピーエンドではないと思うし、彼らのその後が明るい、とは思えない。しかし、読後感は妙な心地よさがあり、気持ちよく本を閉じた。
なんでなのかなと思ったけど、たぶん、クライマックスから迎えるラスト、その間に主人公の八尋がきっとその時にやれることを全てやりきってラストシーンを迎えたんだろうな、とそう思えたからだろうなぁ。ラストシーンは何かを説明するようなことはないのだけど、そう思えたいいラストシーンだったと思います。
いい本でした。

サエズリ図書館のワルツさん 1/紅玉いづき,sime

よい読書を。
たぶん、大災害のような、大きな戦争があった後の世界。そこには、人がゆっくりと滅んでいく様なのか、ゆっくりと立ち直っていく様なのかはわからないけれど、少し退廃的な雰囲気が漂う。退廃的と言っても、『北斗の拳』とか『AKIRA』のようなのではなくw、高橋しんさんの『花と奥たん』とか、田中ロミオさんの『人類は衰退しました』みたいな、影がありつつも、どこかほのぼのとした風景というか。そんな滅びかけてる人の世界の、滅びかけてる本と、それを納める物好きな図書館のお話。
その世界は選べる未来のそんなに多くない世界で、やれることのそんなに多くない世界で、そこで描かれるお話は、それほどに残酷だったり悲惨だったりするような描写はないのだけど、やはりどこか物悲しいというか。なのに、少し心が暖かくなるような余韻が残って、とてもたまらない感触がしました。
そのお話の感触の一端を担っているのは、紅玉いづきさんの言葉、文章にもあるかなぁと思う。ギュッと搾り出すように紡がれた文章は、言葉の端々、句読点まで含めて、スッと沁み込むように入ってくる。それが故に物語の感触を聡く感じさせられる。紅玉さんの作品はこれでまだ3冊目だけど、どの作品もどこか悲しくも、それでいて優しい。この作品もそうでした。
また、今の、このタイミングでこの作品、本好きによる本と本好きに贈られたようなお話が発表されたというのも面白いですね。まぁ、太田さんなんかはそういうタイミングを狙ってたのかもしれませんが。きたないな、さすが太田、きたない。
それにしてもこの本、本に対する愛情にパチュンパチュンに溢れとる。愛情にパンパンに膨らんで針でつついたら弾けそう。まぁでも結局そうなんだよな。
たとえば電子書籍の話。日本に置ける電子書籍は、フォーマットとしての本に現時点では勝ててない。以前に京極さんが言ったという話があるように、電子書籍は電子書籍の形を見つけないといけない。特に日本では。電子上の本の形に拘って発表してる限りは本に追いつけない。ただ、それも「今はまだ」という話だろうとも思う。たとえば、これから先、本みたいな形に囚われないページ構成で、文章も完全にテキストデータ。キャラ名に触れたらキャラの画像がフワッ出てきたり、キーワードに触れたら解説が出てきたり、リアクションをつけたり。イラストなんかも、初めから電子書籍ということならフルカラーでいいわけですし、先程書いたように本の形に拘らなければイラストの入れ方ももっと面白い入れ方できる筈。そういうことが不足なくやれた電子書籍ができたら、普通に電子書籍欲しくなるだろうなぁ。そして、そういう電子書籍、これから先、いつか出てくるんじゃないかと思います。ただ、そうなった時に、紙の本がいらなくなるかというと、そうはならない……と思う…………たぶん。たぶんなw
結局、紙の本が好きなんです。フォーマットとしての本。本は保存するには嵩張るし、紙って意外と重いし。でも、だからこそ愛おしいのです……とは言いません。そんなに、ドラマチックな本との出会いなんてしてないですw でも、本は本なんですよね。そういうことに改めて気づかせてくれる本でした。
1、ということは続きがあるんですね。エピソードをまだまだ読んでみたい魅力的な人たちに溢れたお話でもあったので、続きがとても楽しみです。

大日本サムライガール 1/至道流星,まごまご

これまで経済を中心に据えた作品を多く書いてきた至道流星さんが、星海社で満を持して始めた新シリーズ。メインとなるキャラクターは右翼でアイドル。
ネットや漫画で得た知識でブログや掲示板で……みたいな生温いアレじゃなく、政治団体を立ち上げ街頭で拡声器でアジる。家も武家の血筋で、だからこそ天子様に云々と考える、という最早極右とかそういうレベルに達している系パーソナリティ。そして、そんな極右の美少女が帯やあらすじなどで書かれてる通り、日本の頂点に立つ為にアイドルになる、というお話。ある意味ではとてもシンプルな話ではあるw と、同時に面倒くさい話だw だからこそ面白いとも言えるのかもしれないが。
いや、正直なところ、思い切ったなと思いました。作品に自信がある(実際、十二分に面白い)からでしょうけど、こういう色の作品を作るとどうしても、何をしてもそういう目で見られちゃうようになる、みたいなモノってやはりあると思うので。
たとえば。
伊藤計劃さんが亡くなった時に篠房六郎さんが、伊藤計劃さんと『靖国刑事』というお話のプロットについて盛り上がった、と『百舌谷さん逆上する』3巻のあとがきで書いてらした。短いあとがきなので触りだけ話されてるが、確かに面白そうな企画なのだ。つまり、子供の時から政治や歴史などの勉強を通じて、意識しなくてもうっすらと頭の中にはあるし、ましてや今はネット上でもネトウヨだのブサヨだのと罵り合っている。なもんで、小難しい背景や思想などのややこしい話も割とスルッと頭に入ってくるのだ。と、同時に、成功しても失敗しても重いレッテルを背負うことになる可能性も書かれてある。
このように、どんなに良いネタだと思っても、なかなか書けるもんじゃない。しかも、敵や登場人物の誰かがという話ではない。ヒロインが極右アイドル、主人公はそのマネージャー的立場だ。実際、今巻のあとがき、あとがきではなく注意書きになっているw 当然ながら色々気を使いまくっている。何にせよ、至道さんと星海社には、どうにか最後まで書ききって欲しいと思う。つまんなければアレだが、しっかり面白いし。
また、もし、この本を右傾化した云々という意味で敬遠される方がいらしたら、もったいないと言わざるを得ない。この本を読んで右思想に染まる、などということはまずない。まぁ日毬ちゃんかわいいブヒィ日本大志会入るう! ということはあるかもしれないがw
まごまごさんのイラストもよかった。パキッとした塗りのまごまごさんのイラストと、この作品の色はとてもよくマッチしてる。買おうと決めたのは表紙に惹かれた、というのもある。
ラストはこれ以上にないという、とても素晴らしいヒキだった。早く2巻が読みたい。

マージナル・オペレーション01/芝村裕吏,しずまよしのり

有り体に言えば、外資系民間軍事会社に就職したアラサーのお話。うわあものすごくありてい。
主人公は、ゲームの専門学校に行ったもののモノにならず、ニートを経験した後にデザイン会社に潜り込んだが30歳の年に潰れてニートになろうとした、その時に民間軍事会社の求人広告が目に止まった、という、ああ、なんとなく現実でもありえそうな微妙なラインw
傭兵とか軍事とか全然わからないし、作者さんのゲームであるガンパレード・マーチはゲームはもちろん、アニメなども嗜んでなかったのだけど、この作品はとても面白かった。先ほども書いたようにミリヲタじゃないのでリアルさとかはわからないけど、外資系民間軍事会社の1セクションに就職した30歳の感じというか雰囲気がとても伝わってきてたまらんかった。
30歳はなってみるとふうんって感じだが、まぁオッサンなんだがまだそれほどオッサンってほどでもなく、だからって若者では当然ない。若い情熱みたいなのモノもなくはないんだが、それと同時に変な焦燥感みたいなのもあったりして。勿論、30歳になったら突然そう思うわけじゃなく、いわゆる『アラサー』と言われるぐらいに。なんなのおまえ、みたいな、そういうアレ。ACがどうたらうつ病がどうたらってことじゃなくても、大なり小なり、やはり思うとこは全くないわけじゃない。そういうことを感じやすい時期ではあると思う>30歳 そういうことも含めて、30歳の主人公の傭兵物語というのは面白いなあ。
個人的には漫画の『Black Lagoon』とか、まだアニメしか見てないけど『ヨルムンガンド』とか好きな人は好きなんじゃないかなぁなどと思った。や、毛色は違うのだけど、なんとなく。……これにホテル・モスクワとか出てきたら面白いなあw
そして、しずまさんのイラストも堪能。このサイズでフルカラーで拝めるのはやはり素晴らしいなw
続きありそうなので楽しみ。
それにしても、星海社FICTIONSはイラストフルカラーで、装丁も丁寧。スピンとかも何気に嬉しいし、1200円出した甲斐がある感が素晴らしい。なんとなく思ったけど、星海社FICTIONSとメディアワークス文庫ってターゲットにしてる層は似たようなとこなのかな。その為のアプローチは寧ろ逆に感じるのが、さらに面白いけど。

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