ヒカルセカイ/雨降波近,タカハシマコ

百合姫ノベル4冊目。
今回は一迅社文庫アイリス少女小説大賞への応募作を加筆修正した作品とのこと。
挿絵もしっかりついていて、百合姫ノベルにますます期待が大きくなります。

主人公は不幸の女神候補・ミレット。天界の神様学校の卒業試験として、「1人の人間を不幸にして殺す」という課題を与えられる。そこで、地上に降り立ち彼女が目をつけたのは、ガールズプログレッシブメタルバンド「ノーバディズメルトダウン」でボーカルとギターを受け持つJK・彩乃。いつも不運なのに……不運だからこそなのか……妙におおらかな彩乃にミレットはすんなりと共同生活を送ることになり……といった感じの始まり方。ファンタジー×バンドの百合作品といった感じでしょうか。

まず思ったのが、プログレッシブメタルを聴いたことがない。検索すると、Dream TheaterとかQueensrycheとか出るけど、名前は知ってても音を聴いたことがない。単純に、プログレッシブな感じでメタルな音を出すバンドということでいいのだろうか。と言うと、そもそもプログレッシブとは……みたいな話になりそうなので、この話はこのへんでやめておこう。
まぁそんなジャンルでガールズバンドを組んでギターボーカルを務める奔放なヒロイン彩乃に、主人公であり不幸の女神候補であるミレットが振り回されてしまう、バンドでJKな日々が描かれつつ物語は進んでいきます。
雨降波近さんは音楽活動しているということもあってか、ノーバディの演奏の様子なんかは臨場感があって雰囲気出てるし、ノーバディの面々とミレットとの絡みもなんとも楽しく、非常に楽しく読めました。だからこそ、ノーバディの面々とミレットが不幸の女神の課題へ向き合うことになる場面は、読んでいてヒリヒリとする感触で読んでいて辛い……と言うとネガティブな感じになってしまうけど、言わば、だがそれがいい、という感触というやつで。
個人的には、そこそうなっちゃうの? という場面があったり、最終的なシーンもこういう感じになるのかぁという印象だったりしましたが、全体としてはとても面白かった。

また、最初にも書きましたが、今回の百合姫ノベルは挿絵ががっちり入っております。タカハシマコさんの可愛らしいイラストで表紙だけでなく本文でも作品が飾られており、それも楽しかった。

と、そんな感じで面白い作品でした。一迅社文庫アイリス少女小説大賞から百合姫ノベルへの拾い上げ、というのも面白い試みだなと。こういった作品が他にも出てくると更に面白いレーベルになるなぁ>百合姫ノベル
雨降波近さんのプロフィールを読むと高知県出身なのかな、という気がするので、その意味も含めて、次回作が気になる作家さんが増えました。

あまいゆびさき/宮木あや子,ロクロイチ

百合姫ノベル3冊目!
2冊続けて森田季節さんだったので、一部では森田季節文庫などと言われかけていましたがw、今回は宮木あや子さん。
実は不勉強でまだ読んだことがなく、『官能と少女』、『花宵道中』や『学園大奥』など、個人的に気になるタイトルが多く、以前から読んでみたい作家さんだったので、これを機に、と、この本を手に取らせて頂きました。そして、それは大正解でした。
内容としては、艶やかながらも微笑ましいガールミーツガール。特に、主役となる2人、真淳と照乃は幼い頃に出逢うのですが、その出会いと別れがとても鮮烈で、その場面だけでもう胸が締めつけられる。帯に書かれた「照乃ちゃんとのキスは蕩けそうなチョコレートみたいで」というコピーはこれか、と溜息が出ました。
そして、百合に限らず、こういう恋愛モノでは、主役の2人が出会い、別れ、再会する、というのは当然の展開ではある。それがわかっていても、彼女たちの再会は運命だったのだ、と、そう思わせてくれる。それは、真淳の思いなのか、照乃の強さなのか。
裏表紙のあらすじでは、私立の名門女学校で再会するまでをかなりざっくりと紹介されてますが、そのあらすじの中での展開で既にかなりドラマチックではありますが、その後の2人もかなり波瀾万丈っぷりというか、ある意味では少し大仰な側面もあるお話というかw、なんとも、凄い。とはいえ、あくまで2人に視点がある為、お話の展開に読者が置いていかれる、ということはないように思います。最後までどうなるのか、もう女学生に戻った気分になってドキドキしながらページを捲りました。……女学生になったことないけど……。

そんなわけで、恋愛モノとしても素晴らしく、ガールズラブ充もできて大満足の本作だったわけですが、実は、手に取らせて頂いたのは作者が宮木あや子さんだった、ということ以外にもう1つあります。それは表紙デザインです。
装画はロクロイチさんの艶やかで麗しい真淳と照乃と舞散るシロツメクサのイラストが前面に出た表紙ですが、これが実はカバー紙が半透明になっていて、カバー下にもイラストが印刷されており、そのイラストが見渡す限りのシロツメクサにいる幼い2人が下地になっていて、非常に凝った作りになっています。で、読んだ後にそれを眺めるのがまた堪らないんですな。本当に素晴らしい表紙デザインだと思います。百合姫連載時には挿絵があったらしいですが、この表紙が見れたので……まぁ満足しておくとしますw

というわけで、非常に素晴らしい読書タイムを送らせて頂きました。宮木あや子さんの他作品も読んでみたいと思いますし、次回の百合姫ノベルにも大きな期待をしたいと思います。

ウタカイ/森田季節,えいひ

森田 季節:作 えいひ :絵
一迅社
¥ 1,575
(2013-01-18)

百合姫ノベル第二弾は、第一弾と同じく森田季節さんによる恋心と歌心に溢れるエモーショナル短歌バトル百合ラブコメ。……長いな。
まず、感じたのは短歌ってこんなにエモーショナルなモノなのか、と。勿論、この作品に出てくる短歌が一般に知られる短歌なのだ、とは思わないけれども、にしても、短歌に対するイメージが変わりました。百合作品ですし、全く男臭くはないのですがw、何度かeastern youthが駆け巡りました。短歌のエモさと、作品そのものの全体的な感じも含めて、妙に合う。あくまで個人的なイメージですが、『夏の日の午後』ががっちりハマっております。
さて、この作品における短歌バトルは、歌会という場において、短歌にこめる力で勝負を決する。短歌バトルそのものは、イメージ的には異能バトル的というか。ほんのちょっとした異能があって、攻撃は短歌によって行われ、コンボではないけど返歌や連歌なんかもあって、カードバトルモノのアニメや漫画におけるそれにも近い雰囲気。しかし、その手にしているモノが個々人の内面を吐き出す短歌、しかも、歌にこめる力で勝負が决まるというモノだから、何というか、なんかとても生々しい。先に感じたエモさもそのへんか。その生々しさが、31音に詰める気持ち、言葉とは一体どういうモノなのか、相手に伝えるということはどういうことなのか、その手触りをしっかりと伝えてくるというか。表現すること、伝わることと伝わらないこと。とても色々なことを感じ、考えさせられました。
主人公の登尾伊勢はそんな短歌バトルの名門校の女の子。そして、ヒロインは先輩であり、ライバルであり、恋人である朝良木鏡霞。基本的には、彼女たち2人のお話なのだけど、いやぁ、たまんなかったですね。個人的な好みなのですが、恋愛モノはメインとなる2人にどれだけキュンキュンできるか、というのがとても大事なのです。そういう意味では、この作品の2人はキュンキュンしっぱなしでした。読んでる時に隣に人いたら、キュンキュンキュンキュンうるせーよ! って苦情受けかねないレベルにキュンキュンしてました。2人は恋人同士であり、ライバルなので、その関係性にとても心惹かれるモノがあります。
また、2人を取り巻くキャラたちもイイ。同級生や対戦相手など、それぞれいいキャラたちでしたが、一番印象に残ったのはやはり天川甘雪。元々の飄々とした雰囲気と、伊勢に対する姿勢のギャップにヤラれました。
もう一人気になったのは、出番は少なかった(というか、ほぼなかった?)ですが、白鳥滝花。というのも、COMIC ZINの購入特典SSである『白鳥レター』の主人公として登場しているのですが、短く、なんてことないSSだと思うのですが、本編読んだ後だといろんなことを想像しちゃって、たまらんのです。
と、甘雪と白鳥の感じからして、続編あると見ていいのでしょうか。とても読みたいところですが……。
そして、表紙がよかったですね。えいひさんの日本画風のイラストによるところも大きいですが、それを補強するのに、この金箔のような金色の紙を使ったことで大勝利してる感があります。短歌をテーマにした作品ということで、とても雰囲気出ていて素敵です。裏表紙の流線もイイ。内容も面白かったですが、たとえ面白くなかったとしても1500円出して後悔はなかった、と言えるぐらい大好きです。
そういうわけで、続編、お願いしたいんですが……あるんでしょうか。

ノートより安い恋/森田季節

百合姫に連載された作品4つに書き下ろしを3つ加えた、百合短編作品集。
これまでにライトノベル以外にも一般書籍などで何冊か読んできた作家さんではあったが、特に百合というイメージもなかった為、どういう作品になるのだろうと思っていたけど、百合だろうとなんだろうと紛れもなく森田季節作品でした。それは、伝奇っぽかったり、SFぽかったり、地域色が感じられたり、神社が出てきたり、という「森田季節作品といえば」という記号的なモノもあるけど、やっぱりこの読み味とでもいうか。妙に後を引く余韻を残す読後感。甘味だけでなく、苦味だけでなく。たまらないです。
まぁそんなわけで、この作品は、読んで「キマシタワー」を連発できるような百合作品には、正直なってないです。所謂、『百合萌え』を期待して読むと肩透かしをくらうと思います。勿論、全くないとは言いませんが、そういうモノを期待したい方にはオススメできません。
収録されてある作品は、どの短編も好きと言えるモノばかりだったんですが、10歳の小学生と20歳の大学生の交流を綴った『そこから塔は見えるか』と、「自分を遠い時間に移す」という研究を行なっている研究所の研究員の2人のあれこれなSF『ふたごごっこ』、奇妙な女子のコミュニティを描いた『池姫』が特に印象に残りました。
『そこから塔は見えるか』は、小学生と大学生の何気ない交流から、少女がほんの少し成長していく様子はなんともいえないモノがありました。基本的に小学生の視点なので、大学生が何を思っていたのかはあまり描写されないので読者が想像するしかないですが、まぁそれを想像する楽しさも含め、面白かったです。
『ふたごごっこ』は、一番たまらないものがありました。この作品はSF的な色のお話ですが、内容も凄かったですが、百合とSFを掛け合わせると何故こうも妖しく魅力的に光るのかと思う。まぁそういう風に感じてしまうのは自分だけかもしれませんが。百合をそんなに見てるわけではないのでアレですが、ハヤカワJAから出てる瑞智士記さんの『展翅少女人形館』とか、伊藤計劃さんの『ハーモニー』とか。百合、とは少し違うかもしれませんが、ITANの阿仁谷ユイジさんの漫画『テンペスト』もそんなイメージです。SFという舞台が倒錯感を演出するのかな。百合SFもっと増えろー。
『池姫』は所謂ぼっち女子たちの奇妙なコミュニティのお話なんですが、ぼっち女子なのにコミュニティなのかよ、という気がするかもしれませんが、それは是非とも読んでみて欲しいところ。読後の後味はこの作品が一番なんともいえないモノがありました。
また、本の導入と締めとして、オープニング・エンディングがあるのですが、これもよかったです。オープニングはこれから読む気分を盛り上げてくれたし、エンディングは読後の余韻を深めてくれます。
装丁も素晴らしかった。この表紙デザインはつい手にとってしまう魅力があります。買った後も、フィルムをとってみて、帯をとってみて、帯をとった状態でフィルムをつけてみて、また元に戻して。読む前から楽しかったですもん。中身も、たとえばオープニング・エンディングが黒い紙なのとかたまらないですね。あちこちで装丁が読書を演出してくれて楽しかった。これだけ頑張ってくれると1500円出した甲斐があったなーと否応なく思わされます。
というわけで、隅々まで大満足の一冊でした。もうすぐ出る百合姫ノベル第二弾、同じく森田季節さんによる『ウタカイ』も楽しみです!

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