ダイナミックフィギュア/三島浩司

四国は香川を中心に描かれる巨大ロボットモノSF。スーパロボットアニメをリアルロボットアニメに落としこんだSF作品といった様相。
2011年2月にハヤカワSFのJコレとして刊行されたモノの文庫化。2012年の『SFが読みたい!』の国内篇第3位。
宇宙からの渡来体カラスによって地球の軌道上に張り巡らされた巨大建造物・STPFによって“究極的忌避感”をもたらされ、その圧倒的な技術を前に人類はカラスに支配されようとする中、突如現れたもう一つの渡来体クラマによって救われる。そのカラスとクラマの対決の最中にSTPFが一部損壊し地球に落下。その物体から発生する、概念を学ぶ怪物・キッカイによって人類は新たな危機を迎える……といったあたりが物語の前提。
その物体が落下した先がニューギニア島と四国。そして、ニューギニア島には核が落とされる。殲滅する中で、キッカイが「空を飛ぶ」ことを覚えたのだ。キッカイが拡散することを恐れた人類は核でニューギニア島をキッカイごと焦土と化す。日本政府はそうならざるべく、二足歩行兵器・ダイナミックフィギュアを開発。そのパイロットの一人・栂遊星がこの物語の主人公。
上巻では四国を、正体不明で概念を学ぶ怪物・キッカイが跋扈し、人類の希望である巨大ロボ・ダイナミックフィギュアが活躍する場面を存分に味わい、物語の世界がどういったものなのか十二分に体験でき、そして最後に下巻への強烈な楔が打たれる。下巻はそれを受けて、カラス、クラマ、進化したダイナミックフィギュアを交え、スーパーロボットアニメ的な壮大な物語を締める。
個人的には上巻が非常に面白かった。登場する巨大ロボット・ダイナミックフィギュアの運用の仕方がもう。舞台は四国だけど世界規模で進む話で、ダイナミックフィギュアはキッカイへの対抗力と見られると同時に日本の軍事力と見られる面があって、その運用には周辺六ヶ国の許可が必要という制約があり、外交や政治状況が影響する。またダイナミックフィギュア自体もいざという時に無力化できるように各国に配慮されたデザインになっていたりと……ああ、スーパーロボットをSF作家が描くとこうなるのかぁと感嘆した。
そのダイナミックフィギュアの敵となるキッカイ……概念を学ぶ怪物……というのも非常に面白い。本当に色んなことから学んでいく怪物で、いくら学んでも単体ではその形質を反映することができないのだけど、その学んだ概念を体の一部に記憶させ次世代に反映させるという特質があり、例えば、これによって翼を持った飛行機などの兵器を投入できないなどがある。人類は対策を打ちつつも、キッカイも追い付き追い越せとでもいうか、その様が非常にエキサイティングで非常に面白かった。
下巻も凄く面白かったけどカラスとクラマがメインで、まぁ物語を締める意味では仕方ないのだけれども、上巻であれだけ活躍(?)したキッカイの影が非常に薄くなっており、彼らがどうなったかも割とあっさりというか……それは少し消化不良感があったかなぁ。他にも、あのへんの話はどうなったのかなぁと感じることも少し。これ上下巻だけでなく、ある程度の長編シリーズとかにしてもよかったのでは__? と少し感じた。とはいえ、クライマックスはホントにスーパーロボット的というか、緻密に積み重ねたであろう設定や考証を踏み台にしてあっさりと決着させたのは痛快ですらあり、最終的な満足感は非常に高かったのですが。まぁ上下巻でハヤカワJA1100ページ長って充分長いしなw
また、ちょっとした味付けなんかも面白い。キッカイを迎え撃つ部隊を指揮する司令官・是沢銀路の口上であったり、ネタバレになってしまうので誰かは書かないけど、その人物がここぞという場面で切られた啖呵であったり、準主人公と言ってもいい佐々とそのパートナーの話もグッとくる。
他にも、ダイナミックフィギュアの名前も中二と趣の隙間を縫うような感じ……主人公が主に操るのはシキサイ=四季彩……で、とても好み。シキサイの胸部には四季の絵が描かれるというのもたまらない。表紙では桜の花の絵が書かれたバージョンのモノが披露されてるけど、全てのパターンが見てみたいなぁ……。

というわけで、読んだ甲斐のある満足感のある作品でした。
巨大ロボットモノ……特にスーパーロボット系が好きな方は一読の価値があると思います。

know/野崎まど

メディアワークス文庫を主戦場に面白い作品を発表してきた野崎まどさんがハヤカワJAからSF作品を出すということで、ラノベを好んで読んでいた人たちからも注目度の高かった作品で、かくいう自分も非常に期待が高くある意味ハードル激高で、返って読んだら肩透かし喰らってガッカリしちゃうんじゃないかと思ったけど、大きいお世話もいいところだった。めちゃくちゃ面白かった。

近未来、周囲の情報をモニタリングし交信する〈情報材〉の開発により迎えることになった超情報化社会。人類は脳に〈電子葉〉という脳葉を埋め込み拡張することで、それに対応する。電子葉によって爆発的に超情報化社会が成熟する中で、生まれることになった格差……〈情報格〉。情報材は無差別に情報を取得してしまう……つまり、情報格が高ければ多くの情報が得られ、守られる。低ければ……というわけである。主人公の連レルはそんな社会での情報格5(最高位は6……総理大臣とか)。社会的勝ち組である。そんな連レルが情報材のソースに、かつての恩師・道終常イチの暗号らしきモノを見つけることから物語が動き出す。

その世界観は、攻殻機動隊の電脳のようだとも思えるし、PSYCHO-PASSのシビュラシステム的な監視社会をイメージすることもできるし、それ自体はよくあるモノで大した設定とかではないわけで……野崎まどさんっぽいユーモアもあってまぁこれはこれで楽しいな……などと読んでいたわけですが、恩師の暗号の発見以降に出会うことになる少女・道終知ルの登場から物語は加速していき、くだらないことを考える隙もなく物語の世界にのめり込まされる。
ある意味では、ハヤカワに行こうが、本格的なSF作品だろうが、野崎まどは野崎まどだったという他ない。小難しい話を入れ込む割に何故か非常に読み易く、且つ安っぽくならない。物語がラストシーンに収束していく様は相変わらず美しく、物悲しかったり痛かったりするオチであろうとも、痛快さすら感じさせる手練手管も健在。
Twitterや読書メーターなどの感想でも「最後の一文が凄い」というのが散々言われていて、そんなん見たら最初の話じゃないですけど、ハードル上がりまくるじゃないですか。元来アレな自分は
「お前ら凄い凄い言うけどそんな風に言われたらハードル上がって素直に凄いとか思えなくなるやんアホやなあそんな風に言われて簡単に凄いなんて言うかよ……すげえええええええうおおおおおおお野崎まどすげええええええ」
ってなりましたね。ちょろいすわ。
そこまでの物語がこの一言に収束していく美しさと、それ故のこの一文の痛快さは、なんというか、もう、言葉が出ない。この一文が先にあったのか、書き進めるうちにポッと出てきたのか。

と、こんな風に書くとこの感想読んだ人のハードル上げるだけかもしれんが、野崎まど作品なら大丈夫だと信じてる。
そして、来月にはアニメのファンタジスタドールの前日譚のノベライズが、この作品と同じく、野崎まどさんでハヤカワJAから出るらしい。どんなことになってるのファンタジスタドールとハヤカワJA……。

コロロギ岳から木星トロヤへ/小川一水

2231年と2014年を繋いだ時間と空間を跨いで物語を紡ぐSF。
小川一水さんの作品は今作が初読み。端的に言って、とても楽しかった。
あらすじを読んで、とっつきにくい雰囲気も感じなくもないし、実際読んでいてもどういうこと? ってページを行き来したりする場面もなくはない。が、そのへんを巧くエンターテイメントに持っていっていて、読みやすく、何より楽しい。

個人的に何がよかったって、やっぱりカイアク。3次元の距離や時間を跨ぐように漂う4次元の生物にもうwktkしっぱなし。そのwktk感を崩さない見事なキャラ作りとでもいうか、読んでる間中カイアクに魅せられっ放しでした。
自分はちゃんと物理学とかそういう勉強したわけでもないし、そういうSFとかをいっぱい読んでるわけでもないんですが、宇宙とか4次元とかそういう男の子的な興味だけは一端にあって。たとえば、ヒストリーチャンネルとかナショジオとか好きでけっこう見てるんですが、たまに多元宇宙の話が出てきたり、時間の概念の話が出てきたりして、わからないながらもいろんな空想はしたりしていても、でもやっぱりなかなかちゃんと理解するのは難しくて。
4次元という場所のとっかかりみたいなモノが掴めなくてまとまりがなく、やはり空想がしづらい。そういう部分で、カイアクみたいなキャラが出てくるこの物語はとても面白かった。自分の4次元のイメージ通りというわけではないけど、こんな考え方もあるかぁ、と空想が少し捗って楽しい。
そうそう、捗るといえばリュセージとワランキの2人ですな。2231年のリュセージとワランキの妙に距離の近いコミュニケーションは、2014年の彼女たちの心を満たすに違いないので、カイアクは彼女たちに2人の様子を詳細に教えてあげて欲しい。リュセージとワランキのお話、星逢ひろさんでコミカライズとかしませんかね……?

と、こんなふうに宇宙とか時間とか次元の知的好奇心と、少年同士の友情に腐女子的好奇心が交錯する、いろんな意味で捗るエンターテイメントに仕上がっている作品になっており、とても楽しい読書タイムでした。

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