ノートより安い恋/森田季節

百合姫に連載された作品4つに書き下ろしを3つ加えた、百合短編作品集。
これまでにライトノベル以外にも一般書籍などで何冊か読んできた作家さんではあったが、特に百合というイメージもなかった為、どういう作品になるのだろうと思っていたけど、百合だろうとなんだろうと紛れもなく森田季節作品でした。それは、伝奇っぽかったり、SFぽかったり、地域色が感じられたり、神社が出てきたり、という「森田季節作品といえば」という記号的なモノもあるけど、やっぱりこの読み味とでもいうか。妙に後を引く余韻を残す読後感。甘味だけでなく、苦味だけでなく。たまらないです。
まぁそんなわけで、この作品は、読んで「キマシタワー」を連発できるような百合作品には、正直なってないです。所謂、『百合萌え』を期待して読むと肩透かしをくらうと思います。勿論、全くないとは言いませんが、そういうモノを期待したい方にはオススメできません。
収録されてある作品は、どの短編も好きと言えるモノばかりだったんですが、10歳の小学生と20歳の大学生の交流を綴った『そこから塔は見えるか』と、「自分を遠い時間に移す」という研究を行なっている研究所の研究員の2人のあれこれなSF『ふたごごっこ』、奇妙な女子のコミュニティを描いた『池姫』が特に印象に残りました。
『そこから塔は見えるか』は、小学生と大学生の何気ない交流から、少女がほんの少し成長していく様子はなんともいえないモノがありました。基本的に小学生の視点なので、大学生が何を思っていたのかはあまり描写されないので読者が想像するしかないですが、まぁそれを想像する楽しさも含め、面白かったです。
『ふたごごっこ』は、一番たまらないものがありました。この作品はSF的な色のお話ですが、内容も凄かったですが、百合とSFを掛け合わせると何故こうも妖しく魅力的に光るのかと思う。まぁそういう風に感じてしまうのは自分だけかもしれませんが。百合をそんなに見てるわけではないのでアレですが、ハヤカワJAから出てる瑞智士記さんの『展翅少女人形館』とか、伊藤計劃さんの『ハーモニー』とか。百合、とは少し違うかもしれませんが、ITANの阿仁谷ユイジさんの漫画『テンペスト』もそんなイメージです。SFという舞台が倒錯感を演出するのかな。百合SFもっと増えろー。
『池姫』は所謂ぼっち女子たちの奇妙なコミュニティのお話なんですが、ぼっち女子なのにコミュニティなのかよ、という気がするかもしれませんが、それは是非とも読んでみて欲しいところ。読後の後味はこの作品が一番なんともいえないモノがありました。
また、本の導入と締めとして、オープニング・エンディングがあるのですが、これもよかったです。オープニングはこれから読む気分を盛り上げてくれたし、エンディングは読後の余韻を深めてくれます。
装丁も素晴らしかった。この表紙デザインはつい手にとってしまう魅力があります。買った後も、フィルムをとってみて、帯をとってみて、帯をとった状態でフィルムをつけてみて、また元に戻して。読む前から楽しかったですもん。中身も、たとえばオープニング・エンディングが黒い紙なのとかたまらないですね。あちこちで装丁が読書を演出してくれて楽しかった。これだけ頑張ってくれると1500円出した甲斐があったなーと否応なく思わされます。
というわけで、隅々まで大満足の一冊でした。もうすぐ出る百合姫ノベル第二弾、同じく森田季節さんによる『ウタカイ』も楽しみです!

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