果てなき天のファタルシス/十文字青,ネコメガネ

ジャンルとしては戦争モノ、になるか。ファタルという謎の生命体に攻撃されている人類、という状況。かなり情勢は厳しく、正直、もう滅びゆく世界、というような状況の中での、1人の少年兵の物語。
面白かったのは地の文。主人公の1人称によるモノで別に特段珍しいということはないのだけど、とても落ち着いている感じで、その雰囲気がかえって感情的に響くというか。巧い言い方が思い浮かばないけれども、たとえば音楽に喩えると、とてもエモい。特に終盤、クライマックスの少し前くらいにはやはり色々なことが起こったり、わかったりするのだけど、それに対する主人公の感情が、とてもこっちに訴えかけてくるというか。
元々はBLACKPASTというラノベ系の同人雑誌の2号に執筆されたもので、ちょうど自分も文学フリマで買っていたんだけども……まぁ、積んでました……。本来は、原稿用紙250枚ぐらいで『ぷりるん』を更にヤバくしたラブコメ的な作品をお願いしたみたいだけど、紆余曲折の末、原稿用紙450枚の戦争モノになったご様子。書籍化されてよかったです。レーベルが星海社FICTIONSというのもよかった。大判イラストフルカラーで、表紙デザインもかっこいい。逆に、普通の文庫本だったらBLACKPAST持ってるし、よっぽど好きなイラストレーター、とかじゃなかったら買わなかったかも。別に文庫本を腐すわけではないけども、本の装丁、を楽しむには文庫本はやっぱりちょっと物足りない。ともかく、書籍化にはいい巡り合わせだったのではないでしょうか。
内容的には戦争のお話だし、あまりトーンの明るいお話ではない。描かれる少年少女の青春もスカッとするような楽しさとかとは無縁だ。結末も、何かを得たラストシーンだとは思うけれど、ハッピーエンドではないと思うし、彼らのその後が明るい、とは思えない。しかし、読後感は妙な心地よさがあり、気持ちよく本を閉じた。
なんでなのかなと思ったけど、たぶん、クライマックスから迎えるラスト、その間に主人公の八尋がきっとその時にやれることを全てやりきってラストシーンを迎えたんだろうな、とそう思えたからだろうなぁ。ラストシーンは何かを説明するようなことはないのだけど、そう思えたいいラストシーンだったと思います。
いい本でした。

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