スーサイドクラッチ 魔術師スカンクシリーズ 3/江波光則,中央東口

「The Kids Aren't Alright」
魔術士スカンクシリーズ3巻。やはり、江波さんの青春の物語の切れ味は半端ない。

今回の主人公は『ストーンコールド』や『スピットファイア』でも出てきた逃がし屋のろくでもないジャンキー息子・秋斗。
薬とは手を切った秋斗だったが、知り合ったゴスロリメンヘラ女の美尋と2人でなんとなくダラダラと過ごすうちに、ひょんなことから行方不明になっている沙都を探すことになり、かつての薬の供給源である「魔術師」スカンク・バッツと連絡を取り……という感じの幕開け。

今回の章タイトルの元ネタになったのはThe Offspring。言わずとしれたアメリカのメロコアバンド。もし、彼らを直接は知らずとも、「ヤーヤーヤーヤーヤー」の掛け声で始まる疾走感のある『All I Want』や「アハーアハー」という特長的な合いの手が入る『Pretty Fly(For A White Guy)』は、テレビの番組などでも使用されることもあり、聞いたことがある人もいるのではないだろうか。
速い曲が魅力かと思えば、ずっしりと重さのある曲も得意で、その上で時におどけるようなアレンジもしたりする懐の深さも見せる。その全てを支える焦燥感すら感じる歌のメロディ、それを歌い上げる高さとエモさを併せ持つデクスターのボーカルが何よりも魅力的なパンクバンド。疾走する演奏を彩るヌードルズのギターも、歌とギターをしっかり支えるリズム隊もとんでもなくかっこいい。実力派などと言うのがおこがましいほどの、各国でヒットを飛ばす世界的なバンド。

1章『The Kids Aren't Alright』
1998年に発表された5thアルバム『Americana』に収録されている楽曲。ミュートを混ぜながら不安を感じさせるようなエモいギターのリフから始まる、ハードながら聴かせる力のあるオフスプリングの持ち味の1つとも言える魅力を存分に出した曲。

2章『Dammit, I Changed Again』
2000年に発表された6thアルバム『CONSPIRACY OF ONE』に収録。鋭角に尖った攻撃的なメロディの歌とギターが、焦燥感すら感じる疾走するスピード感が、これぞオフスプリングという曲。

3章『Killboy Powerhead』
1994年に発表された3rdアルバム『SMASH』収録曲。タイトルの言葉が連呼されるサビと、繰り返される印象的なギターのリフが癖になる1曲。

4章『Staring At The Sun』
1章と同じく『Americana』に収録された楽曲。ギターとボーカルだけのパートからスタートしそれなりの盛り上がりを見せたと思ったら、突然疾走するオフスプリングらしいスピード感が気持ちいい曲。

読んだ後に元ネタになった楽曲の入ったアルバムを久しぶりに聴いたけど、なるほど、と思わさせられた。少しビックリするほど、とんでもなくこの作品にマッチングしている(特に『Americana』)。
この作品がとても好みで、しかしオフスプリングを聴いたことがないという人がいるなら……パンク(特にメロコアというジャンル)が嫌いでなければ……聴いてみることを是非オススメしたい。この作品のことを考えながら聴くと、この作品を更に愉しむことができるのではないかと思います。
前2作もそんな感じなのだろうか。クイーンもダフトパンクも、アルバムを1,2枚聴いたことがあるくらいなので参考程度にしかしてなかったけど、この作品がこの感じだと、あっちもそんな感じなのかなと思える。

と、オフスプリングの楽曲を元ネタに飾られた章タイトルの本作ですが、その元ネタのオフスプリングの楽曲に負けない迫力とクオリティで、どうしようもないクソッタレな青春の日々が見事に表現されています。
考えすぎて動けなくなる、そして動けずにいる間に追い詰められる感覚、ジタバタと藻掻く日々、その停滞が、その焦燥感が、疾走するクライマックスをぐんぐんと後押しする。
この物語に出逢えて本当によかったと、そう思える作品でした。
こんなこと言っても仕方ないけど、もっと若い頃に読めたらもっとよかっただろうなぁと思う。そういう意味では、今の十代・二十代前半の人たちに読んでほしい……のかもしれない。

シリーズとしてはここでひとまず終了、なんですかね。
まだまだ読みたい部分のあるシリーズだけども、冷静に眺めると、これくらいがちょうどいいのかな、とも思えなくもない。つまり、本当はもっと読みたい。
ともあれ、本当に面白いシリーズでした。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< July 2019 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

recent trackback

links

profile

search this site.

others

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM