ヴァンパイア・サマータイム/石川博品,切符

人と吸血鬼が世界を分け合って暮らす世界の青春ラブストーリー。
頼雅の家はコンビニで、学校が終わると店を手伝う。その中で冷蔵庫の奥から商品の補充を行う際に、いつも同じくらいの時間にやってくる1人の少女を覗き見ることが日課になっていた。彼女は頼雅と同じ学校の制服だけども、普段は会うことはない。頼雅は人間で昼の学校に通い、彼女は吸血鬼で夜の学校に通うからである。そんなある日、少し帰りが遅くなったところ夜間部の登校風景に出会い、彼女と鉢合わせする……といった始まり方。
昼の世界を人間が、夜の世界を吸血鬼が主として暮らす世界。吸血鬼が怪物としてではなく、異能者としてでもなく、まるで昼に働く人と夜に働く人、それくらいの感覚で表現された世界。その中での人間の高校生である山森頼雅と、吸血鬼の高校生である冴原綾萌の恋愛模様が紡がれていく。

あとがきにも、吸血鬼を特別なモノとして描きたくなかった、というようなことが書かれているが、それはとても徹底されている。勿論、どうしたって吸血鬼らしい習性もあるにはあってそれも描かれるが、血を吸うのは1ヶ月に一度血液パックから行うことであったり、餃子はニンニク抜きであったり、それはなんというか、微笑ましい、という程度に抑えられている。
頼雅が踏み込むことになる吸血鬼……夜の世界の描き方なんかもある意味サラッとしていて、読んでいて、この物語の世界に住む人間と吸血鬼の異物感は、それこそ昼間に通う高校生と夜間部の生徒、というぐらいの感覚なんだろうなぁと思える。
また、主な視点が頼雅と綾萌がバトンで繋ぐように、ほぼかわりばんこに物語を進めていく。人間である頼雅と吸血鬼である綾萌の感覚と感情が、そのそれぞれのズレが、交錯しながら物語に乗せられ、本来非日常な存在である吸血鬼との恋愛を、(読者も)あたかも普通の恋愛のそれであるかのように錯覚する。そして、それ故のラストシーンに、心臓をギュッと掴まれるような感覚を覚えました。

最後は色々捉え方がある終わり方だとは思うけど、どう捉えるにせよ後を引く読後感で、とてもよかった。タイトル通り、夏に読みたい本。
石川博品さんの作品は、『クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門』を読んでいるけど、それとはまた少し違った魅力で、完璧にファンになりました。耳刈ネルリシリーズも読んでみたいと思います。

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